水晶岳・鷲羽岳・黒部五郎岳・薬師岳
<日本百名山縦走シリーズ>
'04/8/21〜26
7月の下旬に焼岳と乗鞍岳を登頂した私は、北アルプス最後の未登の日本百名山である水晶岳を目指すこととした。 単に一峰だけを登るのも芸がないので、折立から太郎平のキャンプ場にべ−スキャンプを設営し、そこから小屋泊りの軽装備で高天原山荘−水晶岳−鷲羽岳−三俣山荘−黒部五郎岳を経て、再び太郎平のキャンプ場に戻り、天気が良ければ次の日に薬師岳をピストンして折立に降りるかなり欲ばりなプランを考えた。これだと、テント2泊、小屋2泊で安上がりな上、一挙に4つの日本百名山を登ることができる。またこれは、日本百名山の数を稼ぐだけの効率的登山?を否定し、いくつかの百名山を縦走することによって多面的な山の味わいをじっくりと深めたいとの私の願いから始めた<日本百名山縦走シリーズ>の山行でもある。 そんなわけで、例によって兄を誘った。兄は、去年の奥秩父山行のテント生活に懲りたのか、最初は渋っていたが、居住性抜群の4人用大形テント・半ダ−スの缶ビ−ル・宴会用の食材を私が担ぐとの条件でどうにか納得した。
8月21日 曇
急行きたぐに JR大阪22:27〜
8月22日 曇後雨
〜JR富山4:32 富山地方鉄道 富山6:00〜有峰口6:45 バス 有峰口7:00〜折立8:15
折立の休憩所で朝食を済ませ、8:50登山開始。今日は太郎平までのボッカだ。兄の要望に応え70リットルのザック一杯に荷物を詰め込んだので重量は20kg近くになった。贅沢の代償とは重いものだ。私ももう往年の元気はない。腰を痛めぬよう、ゆっくり、ゆっくりと歩く。 それでも道が良いので、太郎平に13:00に到着した。キャンプ場は、太郎平小屋から薬師岳の方に20分ほど歩いた薬師峠にある。薬師峠のキャンプ場は素晴らしい。水は冷たくてうまいし、トイレもキャンプ場にしては驚くほど清潔だ。夕方、テントの中で宴会をやっていると、雨が降り始めた。 天気予報では悪くとも曇りのはずだのに、またはずれた。やがて、テントの隅に水たまりができ始めた。明日は晴れてくれ、雨音を子守歌にして眠りに就く。
8月23日 雨
雨は相変わらず降り続いていた。6:10テントを撤収しキャンプ場を出発。途中、太郎平小屋に幕営物資一式を預かってもらい、小屋泊りの装備にて高天原に向かう。薬師沢小屋8:45。当初ここから、沢沿いに高天原峠に向かう予定であったが、徒渉の問題があるため雲ノ平経由のコ−スをとる。吊り橋を渡り、岩のゴロゴロした急な坂を登る。雲ノ平山荘12:00着、周囲を山々に囲まれた絶景もガスのため台無しだ。ここで昼食を取った後、北に道をとり高天原峠を目指す。道は、初め少し登り、小さなアップダウンを繰り返した後、峠まで一気に下る。まるで薬師沢まで降りてゆく勢いだ。この道は不愉快だ。道は泥々ですべりやすく、梯子がいくつもある。小さな虫が追っても追っても顔にまとわりつき、時々、耳の穴や目の中に飛び込んでくる。高天原峠13:50、秘境と呼ばれる高天原山荘に到着したのは14:50であった。 ランプの宿 高天原山荘から歩いて20分の所に有名な露天風呂「からまつの湯」がある。白骨温泉に似た混ぜ物なし?の正真正銘の白濁した湯につかり、温泉沢の山肌を見ながら疲れた体を癒す気分は格別だ。
8月24日 曇後雨
今日のハイライトは水晶岳の登頂だ。幸い雨は、今は止んでいる。天気はゆっくりと快方に向かっているそうだ。5:15高天原山荘を出発。樹林帯を歩き岩苔乗越8:00、ここから再び雨が降り始めた。稜線のため、雨混じりの強風が黒部側の谷底から吹き上げてくる。ザックカバ−が風をはらんで体のバランスを崩しそうになる。夏とはいえさすが3000mの稜線、なめたらいかんぜよ! 重心を低く保って黙々と歩く。水晶小屋9:00、ここにザックをおいて空身で水晶岳をピストンする。 ガスの中、岩だらけの道を進む。風が吹きつけ、雨水が岩肌をしたたり落ちる。9:35水晶岳の頂上に立つ。
ガスで何も見えない。山頂からは赤牛岳に向かう読売新道が岩陵づたいに延びているのがうっすらと見える。とにかく寒い。記念写真をとった後、すぐに下山。水晶小屋の前で数名のパ−ティに出会う。鼻水をたらした私達の姿をみて、「寒いですか」と聞く。「すごく寒いです」と答えてワリモ北分岐に引き返す。風雨は相変わらずだ。休むと体が冷えるので、こきざみに休みなく歩く。だらだら坂を登り11:50鷲羽岳山頂に到着、風を避けた岩影で冷たい昼飯を胃袋に詰め込む。
<鷲羽岳山頂にて兄と>
鷲羽岳山頂を下り、三俣山荘にたどり着いたのは13:30であった。夜、小屋の窓からおびただしい数の星が輝いているのが見えた。明日は晴れだ!
8月25日 快晴
本日は快晴。神がやっとくれたプレゼントだ。5:10夜明けとともに昨日下った鷲羽岳を背にして三俣山荘を出発。三俣蓮華岳の登りにさしかかると、南東の方向に槍・穂高連峰が黒々と登場する。槍ヶ岳の穂先が少し傾いているのまで確認できる。
今日は、歩程9時間の長丁場だ。黒部五郎小屋7:40、これより北側のカ−ルル−トをとり黒部五郎岳を目指す。 ここのカ−ルは見事だ。雲ひとつない紺碧の夏空に蛾々たる白い岩が屏風のようにそそり立つ。それがカ−ルの底の緑と調和してアルペン的な雰囲気を醸しだしている。
<黒部五郎岳の大カ−ル>
10:00黒部五郎岳。去年の7月20日、ピ−クの仲間とここに立ったことを思い出す。『黒部五郎岳』のプレ−トを手にして記念写真に収まる。 去年もここでピ−クの仲間と同じことをした。五体健全で今年も山に登れたことに感謝しよう。
<黒部五郎岳の山頂にて>
雲ノ平を眼下に、薬師岳・水晶岳・鷲羽岳、はるか遠くに太郎平小屋の赤い屋根が豆粒のように見える。 大展望をたっぷり楽しんだ後、今夜の宿営地である太郎平を目指す。
<黒部五郎岳山頂から雲の平と太郎平・薬師岳を望む>
中俣乗越で昼食をとり、北ノ俣岳13:40、木道まじりのなだらかな道を歩いて太郎平小屋に15:20到着。さっそく小屋で買った900円の生ビ−ルで乾杯。太郎平小屋に預けていた幕営物資を引き取り、薬師峠にテントを再び張る。 びしょ濡れのテントが、太陽の光を浴びてみるみる乾いてゆくのが頼もしい。天気予報によると明日も晴れる予定だ。
8月26日 晴
今日は、昨日神がくれたプレゼントのおまけだ。時間も有り余る程あるので思いきり遊ぼう。4:45テントをそのままにして、薬師岳のピストンに出かける。どっしりした重量感のある稜線に出ると、その両側に赤牛岳と有峰湖が表れる。太郎山の山肌に朝日がスポットライトのように当たっている。豪快な眺望に小躍りしながら、写真をバチバチ取る。
6:40薬師如来を祭った御堂のある頂上に立つ。立山へと続く道が延びている。眼前には、佐々成政が富山城落城の折に数百万両の軍用金を49個の壷に入れて隠したとされている鍬崎山が聳え、その反対側には、黒部五郎岳のかなたに槍穂高連峰が横たわる。薬師岳に立つのは高校生の時以来40年振りである。あの時は、先生に連れられて立山−薬師−太郎平−雲ノ平−湯俣のコ−スを歩いた。あれから、私の人生にも色々のことがあった。ともかく、命あることに感謝し、世界の平和を御仏に祈ろう。頂上では一人の若い女性が朝食を作っていた。山の話をしたり、写真をとりあったり、お茶を飲んだりして1時間近く遊んだ。
<薬師岳より佐々成政の黄金伝説で有名な鍬崎山>
<薬師岳より遠く槍穂高連峰を望む>
薬師峠に9:15に戻り、テントを撤収し、薬師峠を10:25に出発して折立に下山したのは14:20であった。
バス 折立15:50〜有峰口17:00 富山地方鉄道 有峰口17:24〜富山18:12 特急北越8号 JR富山18:34〜金沢19:13/特急雷鳥48号 金沢19:40〜大阪22:35