奥秩父<瑞牆山・金峰山・甲武信岳・雲取山>縦走
'03/10/19〜25
瑞牆山から雲取山まで、東西に屏風のように連なる奥秩父の山脈を見れば、山好きの誰もがその端から端まで縦走したいと思うのは自然であろう。まして、瑞牆山・金峰山・甲武信岳・雲取山の四つの日本百名山を含むとあって、『日本百名山縦走派』を自称する私としては満を持した山行である。というわけで10月19日の大坂兄弟のお骨折りによるピーク100主催の『淀川のハゼ釣りと天婦羅パーティー』を満喫した後、奥秩父に出発した。
19日、甲府行きの夜行バスに乗車。
20日、<晴れ>、韮崎より、バスにて瑞牆山荘に入り9時10分登山開始、富士見平小屋を経て、瑞牆山に11時30分登頂。柱状の巨大な岩峰が林立するクライマーが喜びそうな岩山である。
山頂からの眺めは360度で、八ヶ岳・南アルプス・奥秩父の山々が見渡せる。
瑞牆山山頂より岩峰群を望む
再び富士見小屋に引き返し、本日の幕営地である無人の大日小屋に到着したのは14時20分であった。夜は冷えた。テントから首を出すと恐ろしいほどの数の星が光り、テントのフライシートには薄っすらと氷が張り付いていた。
21日、<晴れ>、5時10分にヘッドランプを付けて出発、下弦の月に照らされた 巨大な大日岩の基部を通り、樹林帯の急な坂道を抜け、砂払いの頭に達すると、突然視界が開け、雪を戴いた富士山が忽然と現れる。感動の一瞬だ。岩陵づたいに金峰山山頂の五丈岩に至る。
金峰山への登り(兄) 後方に見えるのは瑞牆山 金峰山山頂の五丈岩
ここから東に向け朝日岳、大弛峠、奥秩父の最高峰北奥千丈岳(2,601m)、 国師岳頂上からうんざりするほど長く下って、国師のタルに13時25分到着。ようやく甲武信岳への登りが始まる。東梓、富士見とほとんど展望のない樹林帯を進み、16時50分ついに黄昏迫る甲武信岳山頂に立つ。
17時15分甲武信小屋テント場に到着。朝5時から実に12時間に及ぶ長い行程であった。夜の9時頃、雨の音で目が覚める。テントの中で雨の音を聞くのは嫌なものだ。明日は晴れて欲しい、それだけを願って再び眠りにつく。
22日、<雨>、雨は朝になっても降り続いていた。今日は甲武信小屋から将監小屋
までの予定であったが、行程を大幅に短縮して笠取小屋を目指すことにする。テントの中から首を出し、折りたたみ傘の下で炊事をする。7時30分雨の中を出発。木賊山を巻き笹平避難小屋で一息入れた後、西破風山、東破風山、雁坂嶺を経て、日本三大峠のひとつと言われる雁坂峠に至る。地味な紅葉に彩られた懐かしく物寂しい日本の古里の峠がそこにあった。
水の補給のため雁坂小屋に立ち寄ると、小屋の人が濡れ鼠の私達を見て、天気が快方に向かっていること、笠取小屋より雁峠の避難小屋に泊まった方が良いこと、雲取山へのルートの説明などいろいろとアドバイスをしてくれた。この雨で多くの登山客のキャンセルがあったという、小屋はガラすきなので本音は私達に泊まってほしいのであろうが、明らかにテント泊と分かる私達の姿を見て、避難小屋の細部まで教えてくれる。山を愛する者の商売気抜きの親切が身に泌みる。
雁坂避難小屋には14時30分に着いた。素晴らしい小屋だ。雨露が防げ、立って炊事が出来るだけでも四つ星ホテルに優る。夜、いななくような日本鹿の鳴き声を幾度も開いた。
23日、<晴天>、今日も長丁場だ。5時15分ヘッドランプを付けて出発、夜露に濡れながら笹原を進んでいく。唐松尾山、将監峠、飛龍権現、北天のタル、狼平を経て、三条ダルミまで来るとあと一息で雲取山だ。
将監峠にて
いよいよ私達の縦走が完結する。その興奮が疲れた身体を上へ上へと押し上げる。14時53分、遂に雲取山山頂に立つ。雄大な富士山が私達を笑って迎える。
雲取山山頂にある避難小屋は雁峠に増して素晴らしい。夜、小用で小屋の外に出ると、満天の星の下、東に東京都の光の海が広がり、南には富士山がうっすらとした影となって佇んでいた。
雲取山にて
24日、<晴れ>、今日の行程は短い。しかも下界での泊まりとあって、ご来光を仰いだ後、7時45分遊びながら山を下る。目的を果たし、やわらかな秋の日差しを浴びながら山を下るのは楽しい。しみじみとした満足感が身体いっぱいに広がってゆく。
瑞牆山の岩峰群の奇観、朝日に輝く黄金色の五丈岩、長かった甲武信岳への道、雨にけぶる雁坂峠の秋、雲取山からの夜景、今となっては何もかもが良き思い出である。
縦走とは何だろう。それは日が昇ると歩き、日が落ちると休む、自然と一体となった山旅の原始の喜びではないだろうか。
三峰山の紅葉
白岩山、白岩小屋、お清平を経て、三峰神社に13時10分着。ここの茶店で久しぶりの美味い昼飯を取り、三峰神社に参拝後、表参道を下り大輪のバス停に下山したのは15時40分であった。
くワンポイントアドバイス >
・増富温泉〜瑞牆山荘のバスは、期間限定バスなので、事前に運転日を現地に確認のこと。
・雁峠避難小屋の水場は、雁峠より新地平に1分ほど下った所にある。
・雲取山避難小屋には水揚がないので、雲取山荘等からデポすること。