石仏ウォッチング 甲山八十八ヶ所

2章 土佐 修行の道場 第24番〜第39番

御詠歌の解釈についての参照リンク

第二十四番
 最御崎寺

  (ほつみさきじ)

本尊:虚空蔵菩薩

詠歌
明星の出でぬる方の東寺
 暗き迷いはなどかあらまじ

大師19歳の時、室戸御崎の御厨人窟(みくろど)にて求聞持法を修法中、明星が口中にはいり、悟りをひらいたと伝えられる。
僧 空海の劇的な誕生である。

石仏の調査
「神呪寺八十八箇所調査報告書(西宮市文化財資料第四十二号)」によると、『石仏は聖観世音菩薩』となっているが、左手に蓮華を持ち右手が与願印であることから虚空蔵菩薩立像と推定される。
石仏:虚空蔵菩薩
第二十五番
 津照寺

  (しんしょうじ)

本尊:地蔵菩薩
この寺の本尊である地蔵菩薩は、江戸時代初期、土佐藩主山内一豊が室戸岬沖で暴風雨に襲われた時、僧の姿に化身して船の舵を取り危難を救ったといわれている。それ以来、本尊は楫取り地蔵と呼ばれ、海上安全の守護仏として舟人から慕われている。

詠歌
法の船入るか出づるかこの津寺
 迷うわが身をのせて給えや

石仏:地蔵菩薩
第二十六番
 金剛頂寺

  (こんごうちょうじ)

本尊:薬師如来
二十三番の後ろ向きに堂に戻った薬師如来に似た話として、この寺の薬師如来は、堂が完成した時、自ら扉を開いて堂に入り鎮座されたといわれている。
正に、薬師如来は自ら動く存在である。

詠歌
往生に望をかくる極楽は
 月のかたむく西寺の空

石仏:薬師如来
第二十七番
 神峰寺

  (こうのみねじ)

本尊:十一面観世音菩薩

詠歌
みほとけのめぐみの心神峰
 山も誓も高き水音

山の上なのに水が勢いよく湧き出している。
夏の歩き遍路とって、まさに「山も誓も高き水音」だ。
石仏:十一面観世音菩薩
第二十八番
 大日寺

  (だいにちじ)
この寺には、大師が末世の人々の来世を願い境内の楠の木に爪で薬師如来を彫り、立ち木をそのまま奥の院とされた「爪彫り薬師」の言い伝えが残されている。その立ち木は、明治元年に倒れるまで生きながらえた。

本尊:大日如来

詠歌
つゆ霜と罪を照らせる大日寺
 などか歩みを運ばざらまし

石仏:金剛界大日如来
第二十九番
 国分寺

  (こくぶんじ)
阿波や讃岐の大寺のほとんどは、長曾我部元親の戦火に焼かれため、土佐出身の遍路は阿波や讃岐の札所では、その出身を隠したといわれる。その元親も、自国の寺は例外であった。
この国分寺は、元親によって再建されたものである。

本尊:千手観世音菩薩

詠歌
国を分け宝をつみて建つ寺の
 末の世までの利益のこせり

石仏:千手観世音菩薩
第三十番
 善楽寺

  (ぜんらくじ)

本尊:阿弥陀如来

詠歌
人多くたち集まれる一の宮
 昔も今も栄えぬるかな

ここの札所は複雑である。
三十番札所は、善楽寺の他にもう一寺ある。
本尊を安置する安楽寺である。このため、昔、札所間に争いが起こった。現在は和解が成立し、安楽寺が本尊を奉安し、善楽寺が納経・御影を扱い、共に三十番札所を名乗ることになっている。

石仏の調査
「神呪寺八十八箇所調査報告書(西宮市文化財資料第四十二号)」によると、『石仏は阿弥陀如来』となっているが、この印相は釈迦五印の定印と判断されることから釈迦如来と推定される。
石仏:定印 釈迦如来
第三十一番
 竹林寺

  (ちくりんじ)
この寺の脇坊妙高寺の僧純信と五台山下いかけ屋の娘お馬との悲恋物語は、『土佐の高知のはりまや橋で坊さんかんざし買うを見た〜』のよさこい節で有名である。

本尊:文殊菩薩

詠歌
南無文殊三世の仏の母ときく
 我も子なれば乳こそほしけれ
石仏:文殊菩薩
第三十二番
 禅師峰寺

  (ぜんじぶじ)

本尊:十一面観世音菩薩
土佐は、太平洋に面した海洋国である。
本尊は、土佐沖を航行する船の安全を願って大師が刻まれたものと伝えられる。土佐藩主山内一豊が浦戸港出帆の時、必ず本尊に安全を祈願したことから「船霊観音」と呼ばれる。

詠歌
静かなる我がみなもとの禅師峰寺
 浮かぶ心は法の早舟

石仏の調査
両手に薬壷を載せていることから、石仏は明らかに薬師如来である。
石仏:薬師如来
第三十三番
 雪蹊寺

  (せつけいじ)
雪蹊寺は、元々、真言宗の道場で開山当初は御詠歌にあるように高福寺と称した。後に、長曾我部元親の臨済宗の菩提寺となり、寺の名も元親の法号から雪蹊寺に改められた。

本尊:薬師如来

詠歌
旅の道うえしも今は高福寺
 のちの楽しみ有明の月

石仏調査
石仏の磨耗激しく判定不能なれど、三十三番の本尊である薬師如来の可能性がある。

家紋の調査
右の写真の家紋は、直違(すじかい ×印)と四つ星(○印)との組み合わせで、三谷氏 桓武平氏系の可能性が考えられる。
長い石段の上に祠がある。 石仏:薬師如来?ほとんど石に近い
石の御堂の天井の石の正面に刻まれた紋、長曾我部の家紋ではない。建立寄進者の家紋? 第二十番にもあった人形。
これは、多聞寺の例から羅漢と推定される。
第三十四番
 種間寺

  (たねまじ)
この寺は、たくさんの底の抜けた柄杓が奉納されていることで知られる。妊婦が柄杓を持参して安産祈願を頼むと、寺で底を抜き祈祷して返す。底を抜くのは、出産時の赤子の通りを良くするためである。妊婦は、安産するとお礼にその柄杓をお寺に納める。

本尊:薬師如来

詠歌
世の中に蒔ける五穀のたねま寺
 深き如来の大悲なりけり
石切の矢穴がなまなましい。 石仏:薬師如来
第三十五番
 清瀧寺

  (きよたきじ)
この寺は、元、行基菩薩の開山で釈本寺と呼ばれていた。
この地に来錫された大師は、寺の北方300mの岩の上に壇を築き七日間の修法を行った。その満願の日、金剛杖で地面を突くと清水が湧き出て瀧となった。そこで大師は、この寺の名を清滝寺と改められた。
水大師の面目躍如たる弘法伝説である。

本尊:薬師如来

詠歌
澄む水を汲めば心の清瀧寺
 波の花散る岩の羽衣
石仏:薬師如来
第三十六番
 青龍寺

  (しょうりゅうじ)

本尊:波切不動明王

詠歌
わずかなる泉に住める青龍は
 仏法守護のちかいとぞ聞く

不動明王の真言
「のうまく、さんまんだ、ばざらだん、せんだ、
 まかろしゃだ、そわたや、うん、たらた、かんまん」は、あまりに有名だ。
石仏:不動明王
第三十七番
 岩本寺

  (いわもとじ)

本尊:阿弥陀如来
    不動明王
    聖観世音菩薩
    薬師如来
    地蔵菩薩
この寺の本尊は神仏を同体とする本地仏で、五つの社の仏を合祀している。

詠歌
六つのちり五つのやしろあらわして
 深き仁井田の神のたのしみ
石仏:定印阿弥陀如来
第三十八番
 金剛福寺

  (こんごうふくじ)
御詠歌にある補陀落(ふだらく)とは、梵語ポータラカの訳で、インドの南海岸にある観音浄土。中国では普陀山、日本では足摺岬や室戸岬、熊野などの南方沖合い海上にあると信じられていた。
「補陀落渡海」は、海を渡り補陀落に向かうことであり、過去に何十人もの僧が決死の船出をしたといわれる。

本尊:三面千手観世音菩薩

詠歌
ふだらくやここは岬の船の棹
 とるも捨つるも法のさだ山
石仏:千手観世音菩薩
第三十九番
 延光寺

  (えんこうじ)
この寺の山号赤亀山(しゃっきざん)は、平安時代の中頃、境内の池に住む赤亀が龍宮城から銅鐘を背負って帰ってきたという伝説にちなむ。
境内には、鐘を背負った赤亀のユーモラスな像が鎮座している。

本尊:薬師如来

詠歌
なむ薬師諸病悉除の願こめて
 詣るわが身を助けましませ
石仏:薬師如来

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