2021年11月3日掲載

高校物理で探検するコマのワンダーランド
コマの章動のメカニズムと単振動近似


はじめに
 コマの章動とは、コマの回転のふらつきである。
章動についてはオイラーの運動方程式で解明されているが、
初学者には今一つ章動の全体像が見えずらいのが実情であろう。
そこで本稿では、安定度S=L32/mgrIをただ一つのパラメーターとして
章動の全体像が理解できるように構成したものである。
章動を単振動にて近似した簡易式があるが、
それはコマの回転数が高速であることを前提としたものである。
しかしながらコマの回転数が高速の時は章動の変動幅自体も微小となるため、
章動が大きな領域では適さないものとなっている。
そこで、本稿では章動のメカニズムを図式的に説明した上で、
章動が大きな領域での精密な単振動近似式を導出するものである。
コマの運動はオイラー角θ(章動)、φ(歳差)、(コマの回転)で表されるが、
φ、はθの関数である。そのため本式によりθと時間の関係が明らかになれば、
ルンゲクッタ法などを使うことなく高校物理の範疇で容易にφとの時間的変化を
導くことができる。

詳細
 理科教材で学ぶコマの運動<歳差・章動>
  Ⅱ 章動 教材:エクセルVBAプログラム
   1章 コマの章動のメカニズムと単振動近似
      付録 単振動近似によるエクセル章動波形

<章動の単振動近似式の要点>



 θ:章動の移動角(コマの軸の傾斜角)(図A参照)
 A:振幅(図B参照)
 L3:コマの軸の角運動量
 I:コマの軸に直交する第1軸の主慣性モーメント(図A参照)
  (コマは回転体なので、第1軸、第2軸がどこにあってもIは同じ)
 ω
p:章動の角速度(図C参照)
 t:時間
 θ
0:コマを手放した時のコマの軸の傾斜角(投入角の初期条件)

    z:鉛直軸
 第3軸:コマの慣性主軸
  コマの軸と同じ
 第1軸、第2軸:第3軸に
  直交する慣性主軸
 L3:コマの軸の角運動量
 ω3:コマの軸の角速度
  :歳差運動の角速度
 θ:コマの軸の傾斜角
 g:重力加速度
 m:コマの質量
 G: コマの重心
 r:位置ベクトル
 O: コマの支点(原点)
図A コマの説明図






 パラメータ コマの安定度 S=L32/mgrI

A:振幅

図B θ0を変化させた時の章動の変動幅
    安定度S=L32/mgrI 上からS=4 5 6 7 8 10 20 100

ωp:章動の角振動数

図C 加速パターンの角速度ωpと投入角θ0の関係 横軸:θ0 縦軸:ωp 
   安定度S=L32/mgrI 右端の上からS=4,5,6,7,8,100


関連サイト
これならわかる地球の歳差運動<地球ゴマで読み解く歳差運動>



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