六甲岩石事典 第3部1章 
荒地山ボルダーマップ 「関西の岩場」編調査報告

 このコーナーでは、「関西の岩場」 白山書房 1985年刊 p32〜37に記載の荒地山のボルダーマップ(boulder 大きな石のことで、登山ではフリークライミングの対象となることがある)に基づき、実地調査を行った結果を報告しております。
なお、入手しやすいガイドブックとして、「六甲山」 ヤマケイ関西ブックスにもボルダーマップが記載されていますので御参照ください。

 参照文献  
@「関西の岩場」 白山書房 1985年刊 p32〜37(「六甲 荒地山」 難波康則 難波秀則 解説)
A「六甲山」 ヤマケイ関西ブックス 2003年刊 p102〜107 (「六甲の岩場」 三輪文一 解説)
  

( )の番号は、クライミングの課題番号で、「関西の岩場」
白山書房 1985年刊 p32〜37に従った。
クライミングの課題順の分類
クライミングの用語解説はhttp://www.ohnishi.ne.jp/~masaki/freeclimbing/より引用
(1)(2)
無名の岩
崩壊

クライミングの課題
1 右上するハンドクラック 2.5m
2 フィストジャム 2m
  岩崩壊のため確認不能。

場所:黒岩の少し上方。荒地山の頂上に向かう登山路に対し、右側T字状に二つの石がならんでいる。マップよりずいぶん谷側にある。
近接する二つの岩を上から撮影、
前の岩が大きく崩壊している。
これが右上するハング気味のハンドクラック?
羊歯が生い茂り見る影もない。
<ハンド・クラック>
岩に走る割れ目で、幅1インチ1/2(4cm)から4インチ(10cm)のものを指す。
<フィストクラック>
岩に走る割れ目で、幅4インチ(10cm)前後のものを指す。
(3)
プロペラ岩 10m

場所:上記の「無名の岩」より谷底に向かって下ったところにある。
(4)
腰痛チムニー 7m
下部は、顕著な左上するスクイズチムニー。上部では、サイズがオフウィドゥスからフイストとなる。

場所:プロペラ岩から谷を挟んだ対岸の尾根の中腹
プロペラ岩から見た、谷を挟んだ尾根にある中央楔型の窪みが腰痛チムニー 腰痛チムニーの接近写真
<スクイズチムニー>
体の厚みぎりぎりくらいの幅しかない、とても狭いチムニーのこと。
そのためチムニーの中で動こうとすると、体の中身が絞り出されるような(squeeze)圧迫感がある。
<オフウィドゥス>
岩に走る割れ目で、幅4インチ(10cm)から10インチ(25cm)のものを指す。
<フイスト>
岩に走る割れ目で、幅4インチ(10cm)前後のものを指す。
(5)
フィンガー
マジック 4m
崩壊

ハングしたフェースに走る左上する弓なりのクラック。
最初はオフハンド(幅約3cm)
屈曲点はフィスト(幅約10cm)
そこから、クラックはさらに細くなる。

場所:荒地山の肩に至る登山路の左手にある。頂上近く、マップよりもかなり山側にある。
立ち枯れた、白い木が目印。
地震により左上する弓なりのクラックが、岩を二分した。左の岩は瓦礫と化して姿を消した。 消失した右の岩。上部から撮影
<オフハンドクラック>
フィンガークラックよりも広く、ハンド・クラックよりも狭い幅のクラック。
ちょうど手の厚みと同じくらいの幅のクラック、3cm程度。
(6)
とんがり岩 
3m

場所:荒地山の肩の直下にある岩小屋の少し左側にある。
とんがり岩正面 こうして見るとカンテそのもの
<カンテ>
岩の面と面が接してできている縦方向にのびた凸状の岩角。
(7)
プラクティス
レイバック 
2m

場所:上記とんがり岩の右隣
横に走る浅いフレーク状のクラック。
これを利用してレイバックの練習をする。
左はとんがり岩、右はプラクティスレイバック
<レイバック>
体を振って半身になり、一方の足をアウトで留め、手ではホールドを引っぱり足は押しつける、一種のオポジション。 コーナー・クラックや足のいいクラックでもっとも多用される。
(8)〜(12)
ビックボルダー
ビックというだけあって、ボルダー群のなかでも最大の見所だ。

クライミングの課題
 8 鯨の頭 2m
 9 チムニー 3m
10 くの字のクラック 8m
11 フレークハング 2m
12 爬虫類のカンテ 6m

場所:荒地山の肩の直下にある岩小屋を下ったところにある。ブラックフェースの上方。
鯨の頭 鯨の頭とその右のチムニー
これが有名な?逆の「く」の字のクラック 続いて右に水平のクラックが走る
横に走るフレークハング。ここを塀を乗り越える要領で突破する。 爬虫類のカンテ、面白い命名だ。ここをトカゲのように岩と体との摩擦を利用してずりあがる。
(13)〜(15)
サンデー
モーニングスラブ

13 左カンテ 6m
14 右スラブ 6m
15 クラック 5m

場所:荒地山の肩
岩小屋から見た正面、縦にクラックが走る。 岩の頂部。深江の浜が見える。
サンデーモーニングスラブ の左カンテ サンデーモーニングスラブ の右スラブ
(16)
ハンドジャム
クラック
 3m

場所:サンデーモーニングスラブ の少し下にある。
正面、強烈なクラックだ。 上部
<ハンドジャム>
ハンド・クラックで用いるジャミング。 クラックに手を差し込み、すべての指を根元から曲げて、手全体を弓状に湾曲させることによってロックさせる。
(17)
岩小屋の
  ボルダー
 2m
場所:岩小屋の前
特徴のある穴が目印、左後はサンデーモニング
スラブ
上部、右はサンデーモニングスラブ
(18)
プラクティス
  スラブ
 
場所: サンデーモーニングスラブの右に隣接
正面、ちょいとした練習用のスラブ サンデーモーニングスラブ側から見た上部
(19)
猫の額スラブ 3m
幅の狭い、角度のゆるやかなスラブ

場所:ビックボルダーの右下
正面、かわいい岩である。 上部
(20)
コーンフレーク
  スラブ
4m
名前の由来は、ホールドからきた?

場所:猫の額スラブの右側やや上にある。
正面 左側面
<フレーク>
岩壁にくっついている岩の薄片。 安定したフレークはよいホールドになるが不安定でつかむとはがれる場合も多く、注意が必要である。
(21)
1フィートルーフ
 
                3m
 喪失
昔、このボルダー上に餅のような形をした岩が載っていたそうである。

場所:コーンフレークスラブの右下
岩の基部の跡(コーンフレーク側より) 前の写真の岩の前から撮影
岩が横一文字に破断したことが分かる
(22)
やさしい
ボルダー
 4m

場所:岩場梯子の上の登山路
「やさしい」に着目してこの岩を選定
今は、登山道の通り道となっている。
ご親切にも赤いペンキで足を置く位置が表示されている。
(23)〜(26)
チーズロック 4m
崩壊

課題の多さから推定してこの岩はかなり大きな岩と推定される。
岩が崩れた今となっては、これらの課題も具体的な意味を失った。

クライミングの課題
23 左ハング
24 真中のライン
25 右カンテ
26 スラブのプロブレム

場所:猫の額スラブの下
こうしてみると四角い岩である。 実は、この上に大きな岩があったと想定される。
この岩が上の写真の岩の上部にあったと想定される。 右の岩の底面。
極めてフラットで、上の写真の岩の破断面と一致する。
(27)(28)
屋根岩 
いかにも、周りを睥睨する屋根岩の雰囲気ではある。

クライミングの課題
27 左ハングルート 7m
28 右ルート 6m

場所:七衛門穴
屋根岩上部 屋根岩側面(岩場梯子側)
右に七衛門穴が覗いている。
左ハングルート 右ルート

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